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Sunday, June 29, 2014

辺野古を守るための国際ネット署名、路上でも展開!The International Petition Campaign to Protect Henoko, Okinawa Goes onto Streets

See below for English version of Reiko Miyajima's opinion article on her and her colleagues' efforts to spread the international petition campain to call for cancellation of construction of a new base in Henoko, Okinawa. The petition page is HERE.

6月22日、『琉球新報』オピニオンぺージに掲載された宮島玲子氏の「論壇」を英訳とともに紹介します。英語版は下方。


写真: New Wave to Hope


論壇

「命を守る署名アクション」 - 市民一人一人が主人公 -

宮島玲子

 「私たちは、沖縄の人々による平和と尊厳、人権と環境保護のために非暴力の戦いを支持する。辺野古の海兵隊基地建設は中止すべきであり、普天間は沖縄の人々に直ちに返すべきだ」
これは今年1月に監督オリバー・ストーン氏ら世界の有識者や文化人103人が出した声明だ。それと同時にオバマ大統領と安倍晋三首相に対し右記を求めるインターネット上での国際署名キャンペーンが開始され、現在1万1千筆余りが集まっている。

 しかしながら、肝心の沖縄でこの電子署名が行われていることをご存じない方が多いということを知った。若者や子育て世代が中心となって今年1月から活動を開始している「ニュー・ウェーブ・トゥ・ホープ(希望に向かって新しいうねりを)」のメンバーが5月末から街頭に立ち、肉筆での署名を展開し、この国際署名につながっていくことにした。

  実際に署名活動を始めてみると、多くの市民の強い意志を肌で感じ取ることができた。「私は宜野湾市民だけれど、普天間基地はもともと人が住んでいた土地。戦争が終わってすぐに返さなきゃならなかったはずなのに、何十年も居座って、わじわじしてるさー」とペンを走らせた年配の女性。幼子を抱っこしながら署名に協力してくれたお母さん。小学生のお子さんにもしっかりと自分の意志で名前を書かせたお父さん。「戦争嫌や、もう基地いらん」と引っ越したばかりの新住居を一生懸命書いてくれた中学生。「電子署名のこと、友だちにも言います」と笑顔で告げてくれた女子高生。通りがかった自民党員の方も「新基地を造ることは駄目だ」と署名に名前を連ねてくれた。

  右も左も、保守も革新も関係ない。これは命を守るアクションなのだ。一握りの政治家や経済界が沖縄の未来を決める時代はもう終わった。これからは名もなき市民一人一人が主人公だ。
私たちは非力だが、決して無力ではない。沖縄の多くの場で語られるこの黄金(くがに)言葉を今一度かみしめながら、私たちは署名アクションを続けていく。どうか多くの方々のご協力をお願いいたします。

  インターネットでの署名は左記の通り。(署名サイト)http://chn.ge/1glVJSw。検索サイトからは「辺野古 新基地 チェンジ」で検索が可能。

  平和の島沖縄に生まれ変わるために、今まさにあなたのアクションを必要としている。


(『琉球新報』2014年6月22日8頁掲載)

写真:New Wave to Hope





Opinion

Petition Campaign to Protect Lives - Each of Us is the Leader -

Reiko Miyajima

“We oppose construction of a new US military base within Okinawa, and support the people of Okinawa in their struggle for peace, dignity, human rights and protection of the environment.”

This is the statement given in January, by 103 scholars, artists, and peace advocates, including movie director Oliver Stone. Simultaneously, a petition demanding the above to President Obama and Prime Minister Abe was launched online, and has currently gathered over 11 thousand signatures.

 However, I found out that many people in Okinawa did not know about this petition. In May, the “New Wave to Hope” movement, which was organized in January and is mainly composed of the youth and parents of young children, began its contribution to this petition by collecting signatures on the streets.

 Upon taking part in this campaign, I have had many opportunities to feel the citizens’ strong feelings towards this subject. “Before I moved to Ginowan, I lived on the land that is now Futenma Base. The land that should have been returned to the people is still being occupied, decades after the war. I am very frustrated,” said an elderly woman who gave her signature.

One mother signed the petition, carrying an infant in her arms. One father saw his elementary school son sign the petition with his own will. One junior-high school student listed his new address that he had just recently moved into, saying “I hate war. I don’t want military bases anymore.” One high school girl smiled and told that she would spread the word to her friends. One Liberal Democratic Party member who happened to pass by said that the construction of a new base could not be allowed, and also signed the petition.

This is not a problem of right or left, conservative or progressive. This is a movement to protect lives. Okinawa’s future will no longer be decided by the corporate world, or a handful of politicians. From now on, each and every citizen will make a difference.

“We may be weak, but we are not powerless.” This is a kugani kotoba, a golden rule that is often said in Okinawa. We will keep this in mind as we continue our petition campaign. I would like as many people as possible to contribute to this cause.

 The online petition is available here: http://chn.ge/1ecQPUJ. It can also be found by searching “Cancel Henoko Change” with a search engine.

 To be reborn as the “Islands of Peace”, Okinawa needs your action now.


This article was printed on Page 8, June 22, 2014 edition of Ryukyu Shimpo. Translation by K & S Norimatsu.

Thursday, June 26, 2014

「核なき世界」に逆行するオバマ米国と、「個別・集団的自衛権」のもとに核使用を容認した岸田外相―『広島ジャーナリスト』より

『広島ジャーナリスト』の2014年6月25日号に掲載された広島市立大平和研究所教授・田中利幸氏の記事を許可を得て転載する。

「核なき世界」を訴えただけでノーベル平和賞を受賞したオバマ大統領は現在「大量の核兵器を抱え込み、それらを少しでも長く維持するだけではなく、より強力な小型核兵器の開発にやっきになって」いる。岸田外相は今年初め「『核兵器の使用を個別的・集団的自衛権に基づく極限の状況に限定する』ことを核保有国が宣言すべきだ」と言った。現在有権者の過半数の反対にもかかわらず、憲法違反である「集団的自衛権行使容認」を閣議決定だけでゴリ押ししようとしているが、その政権の外相の発言は、「日本政府が初めて『核兵器の使用』を公然と容認するものであった」と田中氏は指摘する。深刻な重いが残る論文であるが、広島・長崎原爆69周年を迎えるにあたりしっかり読んでおきたい一文である。@PeacePhilosophy



2013年8月5日、オリバー・ストーンとピーター・カズニックを広島の平和公園に案内する田中利幸。
原爆ドーム前。

世界になお核1万発

 ー‘14核兵器世界情勢-

 「非合法化」こそ有効な手段

 田中利幸

 
 2009年4月5日、就任したばかりのオバマ米大統領がプラハで「核兵器のない世界構築に向けて具体的な歩みを始める」と宣言する演説を行い、世界中の人々に「核のない世界」実現に向けて希望を与えたことは、今だに我々の記憶に鮮明に残っている。周知のように、この演説の素晴らしさが讃えられ、その年末にはオバマ大統領にノーベル平和賞が贈られたことも、まだ記憶に残っている。しかし、この核廃絶への「具体的な歩み」がいかに大きな嘘であったのかがこの5年間で明白となったことは、あらためて述べるまでもないであろう(日本人唯一のノーベル平和賞受賞者である故佐藤栄作元首相も、「非核三原則」という大嘘を国民について受賞した)。そういえば、このオバマ演説にいたく感銘して「オバマジョリティ」などというオバマ支援運動をわれわれ市民の税金まで違法に投入してはしゃぎまくった市長がいた記憶は、腹立たしくていつまでも薄れそうもない。

 米露戦略核は減少したが…
 確かに11年2月に米露間で発効した新START(第4次戦略核兵器削減条約)によって、米露両国の戦略核弾頭配備数だけは大幅に減少した。13年末の段階で、大陸間弾道ミサイルICBM、潜水艦発射弾道ミサイルSLBM、爆撃機などの航空機搭載核弾頭の合計でみると米国は2150発、ロシアが1808発を保有している。そのうち新START対象弾道弾数は、13年9月1日現在で米国の保有数が1688発、ロシアの保有数が1400発となっており、18年までに両国とも1550発以下にまで削減しなければならない。しかし、ミサイルから取り外された核弾頭が即時に廃棄処分されるわけではない。米国の場合、半年以内に再配備可能な核弾頭の所有数が2500発ほどあるため使用可能な核弾頭数は合計4650発、ロシアの場合は合計4500発の核弾頭を今も保有している。完全に廃棄される予定となっている核弾頭は米国は3千発、ロシアは4千発ほどである。これとは別に、米国はこれら4600発以上の核弾頭をできるだけ長期にわたって維持するため「寿命延長計画」に多額の予算をこれまでに注ぎ込んできたし、今後も投入する計画である。米露以外の核保有国の使用可能な核弾頭保有数を含めると、世界にある核弾頭数の合計は推計で1万発をはるかに超える。「核の狂気」から世界が完全に解き放されるのは、まだまだ夢のような話であることを私たちは深く認識しておく必要がある。
 14年4月29日、米国代表のローズ・ガテマラー国務次官が、NPT再検討会議の第3回準備委員会の「一般討論」で演説し「米国は、核兵器使用による破滅的な健康影響を含む非人道的な影響を深く理解しており、その理解こそが最も危険な核兵器を減らし、廃絶に向かう努力へと米国を駆り立ててきた」と述べた。オバマ大統領にせよガテマラー国務次官にせよ、核軍縮に向けての演説の修辞的技巧にはあきれかえるとしか言いようがない。彼らの公的発言がいかに嘘で飾られたものであるかを、以下、簡単に説明してみよう。
 今年3月4日、オバマ大統領は2015会計年度(14年10月~15年9月)の予算教書を議会に提出した。その予算計画によると、米国内の「核兵器の安全性・信頼性・機能性を計画・製造・テストし、維持・発展させる」ことを任務とするエネルギー省・国家核安全保障局(National Nuclear Security Administration=NNSA)の核弾頭関連予算には、今年度の77億㌦から7%増の83億㌦(約8300億円)が来年度には配分される。この予算額は史上最高で、1985年冷戦期のレーガン政権時代を大きく上回る。しかも2019年までに当該予算を、なんと今年度の24%増の97億㌦(ほぼ1兆円近く)にまで増やすというのだから、あきれてものが言えない。
 この予算から、多額が核弾頭ならびに運搬システムの「現代化計画」に充てられる。その中で最も優先順位が高いのが、核弾頭B61の寿命を現在より20~30年延長させる計画のための予算である。核弾頭B61は現在、ベルギー、オランダ、ドイツ、イタリア、トルコに200個配備されている重力加速度爆弾と呼ばれる核爆弾で、これを「改良」して新型戦闘機F35に搭載しようというのである。オバマ政権はこの計画に来年度は今年度予算の20%増の6・34億㌦(約634億円)を充てるが、40億㌦であった当初の推定経費が、いまや100億㌦にまで膨れ上がってしまっている。核弾頭運搬システムであるオハイオ級原子力潜水艦やステルス戦略爆撃機の改造にも、これまで以上に多額の予算が注ぎ込まれる。
 このように核兵器と核兵器運搬システムの「現代化」に未曾有の予算を注ぎ込む一方で、これまで毎年減額続きで今年度は5400万㌦にまで減ってしまった核弾頭廃棄用予算を、オバマ大統領は、来年度はさらに45%も減額して3千万㌦にするという。核廃棄物処理用予算はそのまま据え置きにしておき、NNSAの核拡散防止対策用予算は、これまた昨年度からの大幅減額に続き、来年度も21%減額の1.52億㌦となる。この核拡散防止対策の中の最も重要なプログラムは「世界脅威削減主導」(Global Threat Reduction Initiative)と呼ばれるもで、世界各地に散在する高度濃縮ウランを米露両国に輸送し、それを非核兵器用レベルの核物質に変換して、テロリストの手に渡らないようにするためのものである。

 核兵器に今後30年で100兆円
 昨年12月、米連邦予算事務所が発行した『2014―2023年度核軍事力推定予算』なる研究報告書によると、米国の核兵器ならびに核弾頭運搬システムの「現代化」のための現在予定されている研究と実施には、これからの10年間でなんと3550億㌦(約35兆円)が必要となるとのこと。この推定額は、担当政府高官が推定している必要予算額の7割増の額である。また、14年1月に、民間団体であるジェームズ・マーティン核不拡散研究センターが出版した『1兆㌦戦略核戦力:今後30年にわたるアメリカ戦略現代化』によると、米国政府は、現存する核兵器製造工場の維持・改修と核兵器・核爆弾の改良に今後30年で1兆㌦(約100兆円)を使う予定であるという。これはもう正気の沙汰ではない。1964年公開のスタンリー・キューブリック監督の映画『博士の異常な愛情』でまざまざと映し出された核兵器をめぐる「狂気」が決してフィクションなどではないことが、大量破壊兵器に使われるこの100兆円という数字に現実のものとして表れている。
 かくして、北朝鮮やイランに核兵器開発・保有をやめるよう軍事力で圧力をかけている米国が、ノーベル平和賞を受賞した大統領の下で、大量の核兵器を抱え込み、それらを少しでも長く維持するだけではなく、より強力な小型核兵器の開発にやっきになっているという皮肉な状況が現状なのである。「核兵器のない世界構築に向けて具体的な歩みを始める」という2009年のオバマ大統領のプラハ演説が実行されていることを裏づけるような事実は残念ながら全く存在しない。それどころか、現実の状況はそれに逆行して、人類自滅行為への危険性をますます大きなものにしているのである。
 このような状況であるから、他の核保有国も核兵器廃絶をしようなどという気はさらさらないどころか、ますます核戦略を強化する傾向にある。中国は、すでに12年版国防白書で「核先制不使用」方針を落とし、それまでとってきた「自衛のための核兵器使用」という政策を変更して、「核先制攻撃」もありうることを明らかにした。中国は核戦略の変更のみならず、ICBMを含む長距離ミサイル、新型原子力潜水艦(現在保有数8隻)、宇宙戦争、エレクトロニクス・サイバー攻撃などの開発に多額の予算を注ぎこんで、軍事力の急激な拡大強化に努めている。その中国に近年、ロシアも軍事協力面で急速に接近しているだけでなく、核弾頭巡航ミサイル搭載の爆撃機をグアム近辺にまで飛ばす訓練を行ったり、明らかにアラスカの米軍基地を仮想攻撃目標とした戦略爆撃機と戦闘機による訓練、巡航ミサイル搭載の原潜をメキシコ湾に展開させるなど、米国を仮想敵国とした軍事戦略を今も維持している。
 さらに、最近のウクライナ紛争で米露関係が急激に悪化し、新STARTで同意された戦略核弾頭配備数削減が、当初の目的通りに達成されるかどうかも懸念されるようになってきた。実はウクライナには、旧ソ連時代には1千発にのぼる大量の核弾頭が配備されていたが、1991年に独立して94年にNPTに加盟した。その結果、96年までにすべての核弾頭が廃棄されるかロシアに移管され、ICBMのサイロも地下構造にコンクリートを流し込むなどして使用不可能な状態にされた。その後も保有していた核弾頭用の高濃縮ウランすべてを12年3月までにロシアに譲渡し、引き換えに原発燃料用の低濃縮ウランを受け取った。確かに核弾頭はもはやウクライナ国内には存在しないが、しかし、ウクライナはウラン産出量では世界トップ10の中に入り、15の原子力発電所を持っている。旧ソ連時代に核開発の重要な拠点の一つであったキエフ原子力研究所は今も存続しており、核兵器製造で豊富な知識をもつ研究者がいる。真偽のほどは確かではないが、この人材を米露が奪いあっているという噂もある。
 イギリスやフランスもまた米国にならって、軍事予算の削減にもかかわらず、核兵器予算を減額することはなく、自国保有の核兵器の「現代化」のために多額の予算を配付している。とりわけフランスは核弾頭ミサイル搭載原潜の新型への入れ替え、新型核弾頭ならびに新型ミサイルの開発に力を注いでおり、大統領が代わっても、核戦略には全く変更がない。
 したがって、新STARTが当初の条約内容通りに実行されたとしても、中国やフランス、さらには中東で相変わらずパレスチナやシリアに空爆を続け、イランに対して核攻撃も辞さないと脅威を見せつけているイスラエル、相変わらず緊張関係にあるインド・パキスタンとインド・中国など、米露以外の核保有国が加わらない核兵器削減条約では、世界に1万発以上あると推定される核兵器を廃絶することはとうてい不可能である。

 「核非合法化」確固たる流れ
 こうした核兵器の世界情勢を転換させ、核廃絶への道を一気に推し進める方法は「核兵器の非合法化」の国際法を設けることである。幸いにしてこの数年、世界のさまざまな反核平和団体やNPOが「核兵器禁止条約」を求める運動を展開してきた結果、今やこの要求は世界のさまざまな諸国を動かしつつある。12年10月には、ニューヨークで開催された国連総会第1委員会(軍縮)を舞台に、スイスやノルウェーなど核兵器の非人道性を訴える16カ国が「核兵器を非合法化する努力の強化」を促した声明案を作成。日本政府もこれに署名するよう打診されたが、これを拒否。また13年3月には、ノルウェー政府主催の「核兵器の人道的影響に関する国際会議」が首都オスロで開かれ、120を超える国家政府や市民団体が参加して核兵器の非人道性と核兵器の非合法化について議論が行われた。その結果「いかなる国家も国際機関も、核兵器の爆発がもたらす人道上の非常事態に十分対処できる見込みはない」という議長総括が発表されたが、ここでも日本政府は極めて非協力的な態度を終始とり続けた。
 14年2月、メキシコのナジャリットで146カ国が参加して第2回核兵器の人道的影響に関する国際会議が開かれ、核兵器の非人道性が再確認された。それのみならず、核兵器が使われれば、環境破壊はもちろん、経済、貿易、通信、医療施設、学校などのあらゆる社会体制が壊滅的な影響を受け、その結果無数の市民が打撃を受けることは間違いないが、とりわけ「貧しく、弱い立場にいる人々が最も深刻な被害を受ける」ことも確認された。かくして、核兵器使用が及ぼす深刻な人的、社会的、環境的損害が由々しい「犯罪行為」であるという認識が世界共通のものになりつつあることは、もはや否定しがたい。一刻も早く「核兵器禁止条約」が設置されることが望まれるが、14年12月にオーストリア・ウィーンで開かれる予定の第3回会議で、これに向けてさらなる発展がみられることが期待される(「核兵器使用の非合法化」に関しては10年のNPT再検討会議に合わせて、筆者自身も「核兵器廃絶をめざすヒロシマの会」(HANWA)の提案として意見を発表した。この提案は今も有意義であると自負しているので、ぜひ参照していただきたい。http://www.e-hanwa.org/announce/2010/81

 「核使用容認」の岸田発言
 一方、日本政府は、相変わらず、「世界唯一の原爆被害国として核兵器の究極的廃棄」を望むといった内容の公式宣言を繰り返し発表はするが、その目標に向けての具体的な動きになると、逆にそれを阻止するような言動をとり続けていることは周知のところである。13年4月のNPT再検討会議第2回準備委員会で80カ国が連盟で発表した「いかなる場合にも核兵器を使わない」という表現を含む共同声明に日本政府は加わらず、内外から強い批判を浴びた。そのためであろう、同年12月の国連総会第1委員会では、核兵器不使用を訴える125カ国の共同声明にようやく賛同した。
 14年4月、日本政府がホスト国となって軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)の第8回外相会合を広島で開いた。その結果として発表された「広島宣言」では、上記のような世界情勢を考慮してであろうが「核兵器の非人道性」という点が強調された内容となっている。しかし、「約69年に及ぶ核兵器不使用の記録が永久に続けられるのはすべての国々にとって利益である」という表現を含ませることで、「有効に働いている核抑止力を維持すべきである」という日本政府の方針を暗示する形となっている。しかも「核兵器の非合法化」については全く言及しないままであった。その理由は、日本は米国の核戦力を含む「抑止力」に国防を依存する政策をとっているため、核の非合法化を目指す声明案に賛同すれば、論理上、政策的に整合性が取れなくなるというものである。
 しかし、「核抑止力」に関する日本政府の見解は、最近の安倍晋三政権の「集団的自衛権」行使容認への強い動きにあわせて、さらに悪化していることに我々は深く注意する必要がある。14年1月20日、衆院広島1区選出の岸田文雄外相は4月の広島でのNPDIに向けて、長崎で「核軍縮・不拡散政策スピーチ」と題して講演、その中で政府の新たな核兵器政策に関して言及し「核兵器の使用を個別的・集団的自衛権に基づく極限の状況に限定する」ことを核保有国が宣言すべきだと述べた。要するに「日米が集団的自衛権を行使するような戦闘で『極限の状況』と判断するような事態であれば、核兵器の使用が許される」という主張である。しかも「極限の状況」とはいったいどのような事態なのかについてはなんらの定義も説明もない。既に説明したように長年、日本政府は米国の「核の傘=核抑止力」に依存するという方針を内外に向けて明らかにしてきた。しかし「核兵器の使用」については具体的にどのような状況で使用を認めるかについては、これまで全く言及したことはなかった。岸田発言は、日本政府が初めて「核兵器の使用」を公然と容認するものであった点で、極めて深刻である。
 「集団的自衛権」行使のもとでの「核兵器使用」は、単に米国の核兵器使用容認にとどまるものではなく結局は、日本の核武装そのものの容認にまでつながっていく危険性をはらんでいる。なぜなら「集団的自衛権」を行使して米軍と協同で戦争を行うなら、米軍と同じ戦力を備える必要があり、そのためには核兵器保有も必要であるという論理を許してしまうことになるからである。被爆国日本の、しかも広島市出身の外相が核兵器使用を容認するという発言自体が「異常」であるが、これを批判する声が、広島の政治家の間からのみならず、反核運動に携わっている人たちからもほとんど聞こえてこないのは、なんとも情けない。ピースボート代表の川崎哲氏にいたっては、この岸田発言を一歩前進とまで評価しているありさまである。

 「核保有自体が違法」と提訴
 ここでもう一度「核兵器の使用」と「核抑止力」の犯罪性について確認しておこう。
原爆被害国として核兵器の残虐性と長年にわたる被爆者の苦痛を目にしてきた日本人、とりわけ広島市民の中に、意識的にせよ無意識的にせよ、「核兵器の使用」が犯罪行為であるという認識は広く共有されている。無数の市民を無差別に殺戮し、放射能による激しい苦痛をもたらす核兵器の使用が、国際刑事裁判所ローマ規程・第7条「人道に対する罪」(とくに(a)殺人、(b)殲滅、(c)住民の強制移送、(k)意図的に著しい苦痛を与え、身体もしくは心身の健康に重大な害をもたらす同様の性質をもつその他の非人間的な行為)、ならびに第8条「戦争犯罪」(とくに文民ならびに民用物、財産への攻撃)であるという認識は、国際的にも共有されている。同時に、核兵器の使用はジェノサイド条約(1948年国連採択の「集団抹殺犯罪の防止及び処罰に関する条約」)に違反する行為であるという判断も、専門家の間では強く支持されている。
 ところが「核抑止力」の保持は、実際に核兵器を使う行為ではないことから、犯罪行為ではなく、政策ないしは軍事戦略の一つであるという誤った判断が一般的になっていると言ってよい。実際には「核抑止力」は、明らかにニュルンベルグ憲章第6条「戦争犯罪」(a)「平和に対する罪」に当たる重大な犯罪行為である。「平和に対する罪」とは「侵略戦争あるいは国際条約、協定、誓約に違反する戦争の計画、準備、開始、あるいは遂行、またこれらの各行為のいずれかの達成を目的とする共通の計画あるいは共同謀議への関与」(強調:田中)と定義されている。「核抑止力」とは、核兵器を準備、保有することで、状況しだいによってはその核兵器を使ってある特定の国家ないし集団を攻撃し、多数の人間を無差別に殺傷することで、「戦争犯罪」や「人道に対する罪」を犯すという犯罪行為の計画と準備を行っているということ。さらに、そうした計画や準備を行っているという事実を、常時、明示して威嚇行為を行っていることである。核兵器の研究、実験、設計、生産、製造、輸送、配備、導入、保存、備蓄、販売、購入なども、明らかに「国際条約、協定、誓約に違反する戦争の計画と準備」である。したがって、「核抑止力」保持は「平和に対する罪」であると同時に、「核抑止力」による威嚇は、国連憲章第2条第4項「武力による威嚇」の禁止にも明らかに違反している。96年の国際司法裁判所(ICJ)の『核兵器の威嚇・使用の合法性に関する勧告的意見』も、その第47項で「想定される武力の使用それ自体が違法ならば、明示されたそれを使用する用意は、国連憲章第2条第4項で禁じられた威嚇である」と明記している。
 核兵器保有国が共通して重要戦略とみなし、かつその正当性を常に主張してやまない「核抑止力」、この「核抑止」思想そのものが「犯罪行為」として徹底的に否定されない限り、核廃絶は不可能である。「核抑止」思想を否定する思想を世界の多数派にするためには、それが重大な「犯罪行為」であるという認識を普遍化する必要がある。このことを、我々は市民運動の中で繰り返し言い続け、ことあるごとに強調し、一般市民の考え方を変革していかなくてはならない。
 その観点からすれば、2014年4月24日に、マーシャル諸島共和国が、9カ国の核兵器保有国それぞれを、68年成立のNPT核不拡散条約ならびに国際慣習法でも決められている「核軍縮の義務」という国際法をはなはだしく犯しているという理由でハーグの国際司法裁判所に提訴し、同時に米政府を相手取り、同じ内容で、サンフランシスコの米連邦地裁にも提訴したことの意義は非常に重要である。なぜなら、この提訴は核保有国が核兵器を保有し続けている事態そのものを違法であると訴えた、史上初めての裁判であり「核保有そのものの犯罪性」が法廷での争点になる可能性が非常に大きいと筆者は考えるからである。従って我々は、マーシャル諸島共和国の人々のこの国際裁判闘争を全面的に支援していく必要がある。

(たなか・としゆき 広島市立大広島平和研究所教授)

★このブログの田中利幸氏の過去の投稿はこちらをクリックしてください。

★6月28日追記:
本文に、ピースボート共同代表の川崎哲氏の意見に関する記述がありますが、この問題に関する同氏の見解は、以下のリンク(同氏ブログより)にあります。

日本はどのような状況で核兵器を使用する(してもらう)つもりなのか
2014年1月22日 川崎哲
http://kawasakiakira.at.webry.info/201401/article_10.html
(川崎哲のブログより)

Tuesday, June 24, 2014

安倍政権による河野談話検証結果発表を『ニューヨーク・タイムズ』社説が批判 New York Times' editorial criticizes Abe's reviewing of Kono Statement

 河野談話の検証結果を6月20日に発表した安倍政権を批判する社説が『ニューヨーク・タイムズ』に掲載された。ウェブ版では22日、紙面では23日にニューヨーク版に出た。日本語訳を紹介する(訳は発表後微修正することがある)。

Japan’s Historical Blinders 日本による歴史の目隠し

Apology for World War II Sex Slaves Is Again at Issue 第二次世界大戦時性奴隷への謝罪が再び論争になる [訳者注:ここでの「謝罪」は河野談話を指す。]

 
At a time when constructive relations between Japan and South Korea are more important than ever to Asian security, the two countries, allies of the United States, have been unable to put a difficult history behind them. Unfortunately, that seems unlikely to change soon given the release on Friday of a Japanese report on World War II sex slaves.
アジアの安全保障のために日本と韓国の間に建設的な関係が今ほど大切なときはないというときに、米国の同盟国であるその二国は困難な歴史を乗り越えることができないでいる。あいにく、金曜日に第二次世界大戦時の性奴隷についての日本の報告書が発表され、その状態がすぐに変わる見込みはなくなった。

Prime Minister Shinzo Abe used the report’s release to reaffirm Japan’s commitment to a 1993 statement admitting for the first time that thousands of women from Korea and other countries had been coerced into providing sex to Japanese soldiers and apologizing for those atrocities. But if this was supposed to calm tensions with South Korea it misfired, because the report appeared to raise doubts about the accuracy of the 1993 apology. It said the apology resulted from intense behind-the-scenes negotiations with South Korea and seemed to question whether it was based on solid evidence.
安倍晋三首相はこの報告書の発表をもって、1993年の談話へのコミットメントを再確認した。その談話は、朝鮮半島や他の国々から何千あるいは何万もの[訳者注:英語では thousandsなので、意味は「何千」でも「何万」でもあり得る]女性が日本兵に性を提供することを強いられたことを初めて認め、これらの残虐行為に対して謝罪したものだ。しかしこの報告書が韓国との緊張を和らげることを意図されたとしたらそれは失敗に終わった。この報告書は1993年の談話の正確さにに疑いを抱いているように見えるものだったからだ[訳者注:この社説では the apology 「謝罪」というのは河野談話そのものを指しているのでこの訳文ではわかりやすいように「河野談話」「談話」と訳している]。この報告書は、河野談話が舞台裏における韓国との激しい交渉の結果生まれたものであると言っており、確実な証拠に基づいたものであるかどうかに疑問を呈しているように見えるものだった。

Many historians outside of Japan agree that the Japanese military forced women to work in brothels, yet Japanese nationalists continue to insist the women were prostitutes and were not forced into servitude by the authorities.
日本国外の多くの歴史家は、日本の軍隊が女性たちに慰安所で働くことを強いたことに合意しているが、日本の国家主義者たちはこの女性たちが売春婦であった、そして当局によって奴隷状態を強いられたのではないと主張し続けている。
 
Mr. Abe has done an injustice to the victims of this wartime crime and hurt his country by pandering to a narrow nationalist political fringe in ordering up the report in the first place. During his first time as prime minister, in 2006 and 2007, he endorsed the nationalists’ position; during his second tenure, which began in late 2012, he signaled that he might seek to revise the apology. Subsequent statements, including Mr. Abe’s insistence in March that he shared his predecessors’ “heartache” over the women’s plight, have done little to calm South Korean apprehensions. For South Koreans the report - by revealing the consultations between the two governments when the 1993 statement was being drafted - shows that Japan has never been sincere about the apology. Consultations are crucial for relations between countries, especially on sensitive issues, and it is perverse that talks would be cast in a negative light.
安倍氏は、そもそも検証を指示することで、限定的な国家主義的政治一派の歓心を買うことにより、この戦時中の犯罪の被害者たちを不当に扱い、自国に損害をもたらしている。2006年から2007年までの首相第一期目のとき、国家主義者たちの立場を支持した。2012年末に始まった第二期目には、この談話を見直すかもしれないとの兆しを見せた。3月に安倍氏が強調したような、女性たちの苦しみを思うと歴代首相と同じように「心が痛む」と言ったことも含めて、その後の数々の発言は韓国の人々の不安を和らげるには至らなかった。韓国の人々にとって報告書は-1993年の談話が起草されていた間の二政府の間の協議を明らかにすることによって-日本はその談話について誠実ではなかったということを示すものであった。国家間の関係にとって協議とすることは極めて重要であり、それは繊細な問題ほどそうであるが、話し合いが否定的なイメージを与えられることは道理に反する。

Japanese nationalists will undoubtedly use the report to push the government to retract the apology. It’s time Mr. Abe made it clear to his country and to the world that the “deniers” are wrong. His continued willingness to play to that political fringe is interfering with Japan’s ability to carry on its leading role in the region. Any reasonable American strategy for managing China’s increasingly aggressive actions in Asia depends heavily on cooperation with Japan and South Korea.
日本の国家主義者たちは疑いようもなくこの報告書を政府に談話を撤回させるよう圧力をかけるために使うであろう。今こそ安倍氏は自国と世界に対し「否定論者」は間違っているということを明確にすべきであろう。安倍氏が進んでこの政治一派のご機嫌を取り続けることは日本が地域における指導的役割を果たしていく能力を妨げている。米国が、アジアにおいて増している中国の強気の行動に対処していくために合理的な戦略を作っていくには、日本と韓国との協力がどれだけ得られるかに大きく掛かっているのである。
 
This is also an especially awkward time for Japan to leave any doubts about the issue of its wartime sex slaves. There has been increasing and proper attention focused by the international community on sexual violence in armed conflict; governments and human rights groups have demanded that offenders be prosecuted and victims cared for.
また、特に現在は日本にとっても戦時性奴隷問題について疑念を残すことがあってはまずいタイミングなのである。武力紛争における性的暴力への国際社会による適切な注目が増しているところだ。各国政府や人権団体が、違反者を告発し被害者をケアするようにとの要求をしてきている。
 
At a conference on that issue in London this month, the head of the Japanese delegation, Nobuo Kishi, Mr. Abe’s brother, said: “Sexual violence is a crime. It is important to eliminate the culture of impunity against the perpetrators and to change our mind-sets.” As a democracy and the world’s third-largest economy, Japan cannot be seen as trying to rewrite its past.
先月この問題における会議がロンドンで開かれた[訳者注:6月10日から4日間開催された紛争下での性暴力撲滅を目指す国際会議]が、日本代表で派遣されていた安倍氏の弟である岸信夫氏は、「性暴力は犯罪である。犯人が責任を問われないという文化を排除し我々の考え方を変えていくことが大事である」と言っている。民主主義国家であり世界第三位の経済大国として、日本が過去を書き換えようとしているとみられるようなことがあってはならない。
 
(以上)
 

Friday, June 13, 2014

広島大学への公開書簡―日本軍「慰安婦」授業への産経新聞の不当な攻撃に大学側は抗議すべき

日本軍「慰安婦」問題をはじめ戦争責任の分野で幅広い著作のある広島市立大学平和研究所教授、田中利幸氏による寄稿です。

ここで問題視されている5月21日の産経新聞記事のリンクはこちらです。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140521/plc14052108180007-n1.htm

日本軍「慰安婦」問題について学べる信頼できるウェブサイトはこちらです。
Fight for Justice - 日本軍「慰安婦」-忘却への抵抗・未来への責任
http://fightforjustice.info/

田中氏より:
広島大学での「慰安婦」問題関連授業をめぐって騒動が起きています。本当に情けないのは、教員(韓国人)の一人が不当なバッシングを受けているのに、学長も学部長もこの問題に対して全く声明を出さないで黙り込んでいることです。本来なら、産経新聞の記事が出た直後の段階で、産経新聞に対する厳しい抗議声明を2人は出すべきでした。このような事態を憂慮して、私が「慰安婦問題解決をめざす広島ネットワーク」共同代表の4人の名前で送った要請状にも、何ら返答をもらっていません。最近は広島大学に限らず、「学問の自由」や「大学の自治」をあくまでも守ろうなどという気概のある人物が「長」と名のつくポジションにはつかないのが一般的な傾向になってしまったようです。家永三郎先生は、ご存命のおり、戦前・戦中に権力を恐れて黙り込んだり、権力におもねたりした学者を「侫儒」と呼ばれ、このような「侫儒」が多くなり大学が戦争に全面的に協力していってしまった事態を2度と繰り返してはならないと注意を促し続けておられました。本当に情けないことですが、いまや日本の大学には「侫儒」がはびこりつつあるようです。 
以下、日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワークから広島大学学長と総合科学部長への公開書簡です。

 
広島大学学長 浅原 利正 様 
総合科学部長 吉田 光演 様 

前略

突然メールを差し上げます失礼のほど、ご容赦下さい。私たちは、「日本軍慰安婦」問題の実相を市民に知らしめると同時に、今もご存命の元「慰安婦」女性の人権を守ることを目的に活動している広島の草の根運動組織です。 

ご承知のように、521日付け『産経新聞』は『講義で「日本の蛮行」訴える韓国映画上映 広島大准教授の一方的「性奴隷」主張に学生から批判』と題する記事を掲載しました。この記事では、「日本軍慰安婦」問題に関するドキュメンタリー映画「終わらない戦争」を教材として使った、総合科学研究科准教授に対する一受講生の意見を次のように紹介しています。『「いつから日本の大学は韓国の政治的主張の発信基地に成り下がってしまったのか」と広島大学で韓国籍の男性准教授の講義を受けた男子学生(19)は、ため息交じりに語った』のであり、『国立大学の授業として、慰安婦募集の強制性があたかも「真実」として伝えられたことに疑問を呈し』たと。さらに、慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の官房長官、河野洋平の談話。強制性の根拠とされた韓国人元慰安婦16人の証言は、信憑性の調査も行われなかった」と記して、河野談話があたかも虚言であるかのような表現をしています。 

河野談話」に関する議論が私たちのこの書簡の目的ではありませんので、ごく簡単にのみ説明させていただきますが、河野談話は、単に元「慰安婦」女性の証言だけに基づいて作成されたものではありません。戦時中に連合軍側が作成した調査資料やオランダ軍が戦後の1948年に行った「バタビア裁判」(南方軍幹部候補生教習隊の士官たちが35名のオランダ人女性を「慰安所」に強制連行し強姦した犯罪審査)記録などを参考にして作成したものであり、極めて信憑性の高い内容の政府公式見解です。 

「慰安婦」と呼ばれた韓国人を含む多くのアジア人ならびにオランダ人女性が、アジア太平洋戦争期間中に日本軍ならびに日本政府が犯した「人道に対する罪」の犠牲者であったという事実は、200012月に東京で開廷された「日本軍性奴隷制を裁く女性国際戦犯法廷」でも明確に証拠づけられている事実です。この法廷で判事を務めた4名と主席検事を含む40名以上の検事団のほぼ全員が、国際的に第一級とみなされている法律専門家であり、裁判は当時の国際法に照らし且つ東京裁判憲章に基づき、しかも膨大な関連資料が証拠資料として提出され、検証された上で、「日本軍慰安婦制度」に対する日本の「国家責任」と日本軍が犯した「慰安婦」に対する「人道に対する罪」が厳密に審理されました。ドキュメンタリー映画「終わらない戦争」は、そのような歴史的事実を背景に制作されたものであり、人権問題、とりわけ戦争における「女性の人権侵害」問題を学生に教えるうえでは、極めて教育価値の高いものであることを、私たちはここで明確にしておきたいと思います。 

しかし、どのような内容の教材であれ、学生各々の受けとめ方や意見、判断が異なってくるのは当然です。したがって、教材資料の内容をめぐって教員と学生の間で、さらには学生同士の間で、自由で活発な議論が行われるのは当然です。たった一人の学生が教材の内容が気にくわないからという理由で、また、その教員が「韓国籍」だからという理由で新聞が公的に糾弾することは、明らかに日本国憲法23条で保障されている「学問の自由」への由々しい侵犯行為です。同時に、新聞によるこのような大学教員への個人攻撃は、憲法第19条で保障されている「思想及び良心の自由」をも犯す犯罪行為です。

日本におけるこの「日本軍慰安婦」問題の取り扱い方については、2013517日に、国連経済社会理事会社会権規約委員会が、「日本に関する第3回提起報告に関する最終所見」の中で次のように述べています。「当委員会は、長年にわたる『慰安婦』搾取の影響に対して日本国家があらゆる必要な処置をとり、『慰安婦』が経済的、社会的、文化的権利を享受できるようなあらゆる保証処置をとるよう勧告する。当委員会はまた、『慰安婦』に対するヘイト・スピーチや、彼女たちに汚名をきせるようなその他のやり方を防止するため、『慰安婦』搾取に関して国家が公衆を教育するよう勧告する。」(強調:引用者) 

さらに同年531には、国連拷問禁止委員会が「日本軍慰安婦」問題に関して日本政府に対する勧告を発表しています。これまで、国連の複数の人権関連委員会による「慰安婦」問題に関するたびかさなる勧告にもかかわらず、日本政府はこれらを拒絶し続けていると、拷問禁止委員会は日本政府を厳しく批判し、下記の5つの方法で「即時かつ効果的な立法的および行政的措置をとり、『慰安婦』の諸問題について被害者中心の解決策をとるよう強く求め」ています。


  1)性奴隷制の諸犯罪について法的責任を公に認め、加害者を訴追し、適切な刑をもって処罰すること。

  2)政府当局者や公的な人物による事実の否定、およびそのような繰り返される否定によって被害者に再び心的外傷を与える動きに反駁すること。

  3)関連する資料を公開し、事実を徹底的に調査すること。

  4)被害者の救済を受ける権利を確認し、それに基づき、賠償、満足、できる限り十分なリハビリテーションを行うための手段を含む十全で効果的な救済と補償を行うこと。

  5)本条約の下での締約国の責務に対するさらなる侵害がなされないよう予防する手段として、この問題について公衆を教育しあらゆる歴史教科書にこれらの事件を含めること。(強調:引用者) 

したがって、国連加盟国の日本の大学が、「日本軍慰安婦」問題で学生を教育することは、拷問禁止条約締約国の教育機関としての責務であり、これを怠ること自体が国際的な倫理的信頼性を自壊させることになります。 

日本における「慰安婦」問題の取り扱い方は、このように国際的な注目を集めており、今回の広島大学でのこの問題の取りあげ方についても、おそらく海外の多くの人権団体がすでに注目していることと思われます。平和教育方針を強く国内外で強調されてきた貴大学が、「学問の自由」、「思想及び良心の自由」、ひいては「大学の自治」を守る確固たる信念を公に表明し、産経新聞の記事に対して強い抗議を表明しなければ、それは貴大学の国際的信頼性そのものを崩壊させることにつながるであろうと私たちは懸念します。 

貴大学が、元「慰安婦」女性ならびに教員の人権を守るために、平和と正義への堅固な信念と勇気をもってこの問題の処置に当たられることを強く望んで止みません。 

201463

足立修一、高雄きくえ、田中利幸、土井桂子
日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワーク・共同代表

日米政府へ、愚かな辺野古基地建設計画を一日も早く断念せよ。US and Japanese governments, give up the Henoko base construction plan!

名護の作家、浦島悦子氏から送られた抗議声明を掲載します。英訳はガバン・マコーマック氏によるものです。English translation by Gavan McCormack.


辺野古の浜、柵の向こうはキャンプ・シュワブ。(6月3日乗松聡子撮影)


辺野古新基地ボーリング調査に向けた制限水域拡大に抗議する声明

Statement of Protest
- Against the Extension of the Restricted Water Zone for Boring Survey in Preparation for the New Military Base Construction at Henoko
 

 名護市民・沖縄県民の民意を蹴散らして何がなんでも辺野古新基地建設を強行しようとする安倍政権は、報道によれば、7月上旬にも基地建設工事に向けた海底ボーリング調査を開始する予定であり、住民・市民の抗議活動の排除を目的として漁業制限区域(立ち入り制限区域)をこれまでの「沿岸から50m」から「同2000m」と大幅に拡大することを目論んでいる。そして、住民らがその区域に入った場合には刑事特別法に違反する「海上犯罪」として積極的に取り締まるよう、海上保安庁に指示したことも明らかになった。
The Abe government, determined at whatever the cost to sweep aside the wishes of the citizens of Nago and the people of Okinawa and to enforce construction of a new military base at Henoko, reportedly plans to commence in July boring into the sea floor in preparation for base construction and to greatly extend the fisheries limitation (entry restricted) zone from the current 50 meters from shore to 2,000 meters in order to exclude the protest activities of residents and citizens. And it has been revealed that instructions have been issued to the Coastguard that, in the event of local residents or others entering into that restriction zone they should be subject to severe enforcement measures for “maritime crimes” under a Special Criminal Law.

 これは、国家権力による恣意的な海上での基地拡大・強化であると同時に、10年前(20045年)の海底ボーリング調査が、地元住民・市民をはじめとする抗議行動によって1か所も行えず、中止に追い込まれたことの再現を恐れた事前弾圧であり、断じて認められない。
It is not only a case of arbitrary exercise of state power to expand and reinforce a base at sea but also an attempt to block in advance any recurrence of what happened 10 years ago (2004-2005), when the protest movement led by local residents and citizens forced the abandonment of the sea-floor boring survey without it being conducted even in one single spot. We absolutely cannot allow this.

 さらに政府は、ボーリング調査区域にブイを設置し、基地建設に反対する住民らが船などでブイを越えた場合、その時点で刑事特別法を適用して拘束や逮捕ができるようにするという。ブイ設置やキャンプ・シュワブ内にある海保施設の機能強化・人員増加等の経費などに充てるため2014年度予算の予備費から最大500億円を拠出する方針も固めている。
Furthermore, the government is going to set up buoys around the boring survey site and detain and arrest under a special criminal law any ships or boats on which local residents opposed to base construction might cross the line marked by them. Measures to allocate up to 50 billion yen (ca. $500 million) provisional expenditure under the 2014 budget for reinforcement of the Coastguard and increasing its staff numbers within Camp Schwab are being strongly pursued.

 これら一連の動きは、この間の2回にわたる名護市長選挙で示された名護市民の民意、昨年1月の安倍首相あて「建白書」や各種世論調査で示されている沖縄県民の民意を、国家権力と金力で叩き潰そうとする許しがたい暴挙であり、沖縄差別そのものである。このようなことがまかり通るなら、もはや日本は民主主義国家とは言えない。
This succession of measures amount to an unforgivable outrage and attempt to crush by state power and money power the will of the people of Nago City as shown twice over recent years in mayoral elections and the will of the people of Okinawa as shown in the “Kempakusho” addressed to Prime Minister Abe in January 2013 and in multiple opinion polls. It is discrimination against Okinawa. If such things continue, Japan will no longer be able to be seen as a democratic country.

 10年前、ボーリング調査を強行しようと辺野古海域に派遣されたスパッド台船を固定するための足が海底のサンゴを破壊し、大問題になったことを、私たちははっきりと記憶している。辺野古・大浦湾海域は沖縄でも数少ない、健全なサンゴ・サンゴ礁の残る貴重な海域であり、政府・環境省も保全すべき重要沿岸域に指定している。健全な自然環境を次世代に残すべき義務を持つ国が、自らそれを破壊する行為は言語道断である。
We vividly recall the huge problem that occurred ten years ago when the pylons (“spuds”) anchoring the pontoon platforms sent to Henoko for the boring survey destroyed the seabed coral. The Henoko and Oura Bay region is rare even in Okinawa for its precious healthy coral and coral reef, designated by national and prefectural governments as an important coastal zone that must be protected. The behavior of a country that has the obligation to pass on a healthy natural environment to future generations itself destroying that environment is utterly unacceptable.

 また、同海域に広がる海草藻場は、絶滅に瀕した日本のジュゴンのきわめて重要な餌場となっている。政府・防衛省が行った環境アセスメントでは、ジュゴンは同海域の藻場を利用しておらず、基地建設の影響は少ないと評価されたが、先月から今月にかけて地元NGOや日本自然保護協会などが行った複数回の調査で、埋め立て予定海域=ボーリング調査予定海域のど真ん中にジュゴンの食み跡が多数確認され、ジュゴンが日常的にこの藻場を利用していることがわかった。
Furthermore, the sea grass spread through this marine area provides an extremely important feeding ground for the endangered Japanese dugong. In the environmental impact assessment conducted by the Department of Defense for the government, the effect of base construction was reckoned to be slight because dugong were not making use of the sea-grass beds in this marine zone. But investigations conducted on several occasions in May and June by environmental NGOs and by the Nature Conservation Society of Japan were able to confirm the existence of multiple dugong feeding sites right in the middle of the survey site (the planned reclamation zone), and we have learned that dugong use these feeding grounds on a daily basis.

この事実は、防衛省が行った環境アセスのでたらめさを白日の下にさらすと同時に、この海域におけるブイ設置やボーリング調査、そして言うまでもなく埋め立てが、国の天然記念物であるジュゴンの餌場を奪い、生態をかく乱し、絶滅に向かわせるものであることを示している。
This fact exposes the slipshod character of the Ministry of Defense’s environmental impact study and it also shows that the attachment of buoys, the boring survey, and of course the actual reclamation, would deprive dugong, the country’s natural monument, of its feeding grounds, disturb its ecology and drive it towards extinction.


私たちは、安倍政権による名護・沖縄に対する畳み掛けるような暴力に、満腔の怒りを持って抗議するとともに、このような理不尽な攻撃を決して許さず、日米両政府がこの愚かな基地建設計画を一日も早く断念するよう強く求めるものである。
We protest with anger rising from the depths of our being against the violence that piece-by-piece the Abe government applies towards Nago and Okinawa. Never will we submit to such a cruel attack. We strongly call upon the governments of Japan and the United States to give up as soon as humanly possible this idiotic base construction plan.
 

2014610
June 10, 2014

名護・ヘリ基地反対協議会

Nago Conference Opposing Heliport Construction