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Thursday, October 03, 2013

画期的な米国務、国防長官揃っての千鳥ヶ淵墓苑訪問の意味は、「米国のアーリントン墓地に相当するのは靖国ではなく千鳥ヶ淵である」という、安倍政権へのメッセージ

(追記:10月6日の追加投稿「日本でだけ報道されないケリー、ヘーゲル両長官の千鳥ヶ淵戦没者墓苑訪問の意義」もご覧ください。)

米国の国務長官と国防長官がそろって来日したことが初めてで「日米同盟」の強化を強調する報道が目立つが、何が画期的だったかというと、この二人が3日の午前に国立千鳥ヶ淵戦没者墓苑に揃って献花したことである。外国の要人としては1979年のアルゼンチン大統領以来だという。これは、米国の国立アーリントン墓地に相当するものは靖国神社だと主張する安倍首相とその政権にとっては屈辱的な出来事であろう。二人の千鳥ヶ淵訪問は実質的に、米国による公式な靖国神社否定とも取れる。来日の目的には、「中国と韓国を歴史問題で刺激するな」と釘を刺すこともあったのではないだろうか。

これについてなかなか報道が見つからないのだが、一番詳しく報道しているのがAFP.である。

米国務長官らが千鳥ヶ淵墓苑で献花
一部引用:

「安倍晋三(Shinzo Abe)首相が5月に訪米した際、靖国神社を米国のアーリントン国立墓地(Arlington National Cemetery)になぞらえたことに対するけん制とみられる。」

「同行した米国防総省高官は記者団に対し、千鳥ヶ淵戦没者墓苑はアーリントン国立墓地に「最も近い存在」だと説明。ケリー国務長官とヘーゲル国防長官は「日本の防衛相がアーリントン国立墓地で献花するのと同じように」戦没者に哀悼の意を示したと述べた。」

ここからも、米国政府としては二人の千鳥ヶ淵献花に強い政治的意味を持たせていることがうかがわれる。

AFPの英語版の記事の方はもっと内容が多い。
 Kerry, Hagel lay wreath at Japan's national cemetery

重要と思えるところを抜粋して翻訳する。

Unlike Arlington, Yasukuni’s caretakers promote a view of history that is controversial even at home, with the accompanying Yushukan museum staunchly defending much of Japan’s wartime record.
アーリントンとは違い、靖国神社を管理する人々は日本国内でも議論を呼ぶ歴史観を宣伝しており、付属の遊就館という資料館は日本の戦時中の行為を擁護している。

A U.S. official told media Kerry and Hagel were paying tribute at Chidorigafuchi in the same way that “Japanese defense ministers regularly lay wreaths at Arlington”.
米国高官がメディアに伝えたところによると、ケリーとヘーゲルは「アーリントン墓地に日本の防衛大臣たちが献花するのと」同様に、千鳥ヶ淵に敬意を表した。

“This memorial is the closest equivalent. It honors Japanese soldiers, civilians, and support personnel killed on WWII battlefields but whose remains were never recovered by their families. It is a gesture of reconciliation and respect.”
高官「この墓苑が一番(アーリントンに)近いものだ。第二次世界大戦の戦場で死んだ日本兵、民間人、補助的業務に就いていた人々に敬意を表するもの。これは和解と尊敬の意思表示である。」

Seki Tomoda, an expert on international politics and diplomacy, said the wreath-laying could be Washington’s attempt to nudge East Asia over the hump caused by the Yasukuni issue, by conferring legitimacy and respectability on Chidorigafuchi.
国際政治と外交の専門家のセキ・トモダ(訳者注:友田 錫氏のこととおもわれる)は、献花は、千鳥ヶ淵墓苑に正当性と社会的地位を与えることによって、靖国問題でしこりを抱える東アジアを(解決にむけて)促す米国政府の試みではないか、と言った。

“What’s worrying America most is the fierce row among Japan, South Korea and China over the Yasukuni issue,” he told AFP. “Visiting a more neutral place may be a message from Americans… that they want the three countries to ease their confrontation. Yasukuni, unlike Arlington, is a religious facility… I think it’s impossible that Hagel or any other American leader would visit Yasukuni. Chidorigafuchi was an option (for the U.S.) in order to send a message.”
「米国にとって一番懸念なのは日本、韓国、中国の間の靖国を巡っての争い事だ」トモダはAFPにかたった。「より中立的な場所を訪問することによって、米国はこの3国に対立関係を緩和してほしいとのメッセージを送っているのかもしれない。アーリントンと異なり靖国は宗教施設である。ヘーゲルや他の米国の指導者が靖国を訪問するなど不可能であると思う。千鳥ヶ淵が(米国にとって)メッセージを送るための一つの選択肢だったのだ。」

(AFPニュース抜粋以上)

日本の報道がなかなか見つからないのだが、

時事通信の報道はこの「メッセージ性」に言及している。
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201310/2013100300100&g=pol&relid2=1_1
「同墓苑は宗教色がなく、A級戦犯が合祀(ごうし)されて閣僚の参拝が中韓両国との対立の種になっている靖国神社と異なる。米閣僚の訪問には、戦没者の追悼をめぐり、冷静な態度を維持するよう日本を含む各国に促すメッセージが込められている可能性もある。」

朝日新聞は行ったという事実と、「米国の閣僚が訪問するのは異例」との言及のみ。
http://www.asahi.com/politics/update/1003/TKY201310030096.html

産経新聞は異例さを強調し、外務省が「聞いたことない」と言ったことにより、外務省が懸念を持っていることを示唆している。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131003/plc13100312540004-n1.htm

見渡したかぎりでは日本の主要メディアの報道は非常に控え目で、報じていたにしても二人の訪問の意義を問うことはほとんどないように見える。安倍政権に気遣っているのだとしたら情けない。 @PeacePhilosophy

10月5日追記。政治外交評論家の天木直人氏はこの件に関し「靖国神社にこだわる安倍政権への痛烈な警告に間違いないでしょう。その事を指摘する日本のメディアがないところもまた日本のメディア安倍政権迎合そのものです。」とメールでのコメントをくれた。天木氏自身のメルマガでもこう書いています。「メディアのいかさまぶりの典型はケリー国務長官とヘーゲル国防長官が千鳥が淵戦没者墓苑を訪れたことの意義を正しく書かないことである。安倍首相はさぞかし腰を抜かしたであろう。これは米国が日本の戦没者に哀悼の意を表する場所は、靖国神社ではなく千鳥が淵だと言っているのだ。 米国のアーリントン国立墓地は、安倍首相が言うような靖国神社ではなく、千鳥が淵だと言っているのだ。痛烈な米国の安倍批判である。」

2 comments:

  1.  ケリー国務長官とヘーゲル国防長官が千鳥が淵戦没者墓苑を訪れ、アメリカの国立アーリントン墓地に相当するのは千鳥が淵だというオバマ政権の認識を示し、靖国神社を否定したのだと私も思います。

     ただ、靖国神社を存続させる上でアメリカの一部勢力が大きな役割を果たし、今、東アジアの軍事的な緊張を高めようとしているアメリカ人がいることも確かなようです。

     日本が降伏した直後、靖国神社は焼却される可能性がありました。GHQ/SCAP内部の少なからぬ将校がこの神社を焼き払うべきだと言っていたようです。それを阻止するために自分は動いたと主張しているのがブルーノ・ビッテル(ビッターとも表記される)神父です。(朝日ソノラマ編集部『マッカーサーの涙』朝日ソノラマ、1973年)

    (参考:http://plaza.rakuten.co.jp/condor33/diary/201308160000/)

     日本の戦後史に興味のある方ならご存じでしょうが、このビッテルはニューヨークのフランシス・スペルマン枢機卿の高弟だったそうです。スペルマンはCIAと教皇庁を結ぶ重要人物でした。

     1953年にビッテルは霊友会の闇ドル事件にからんで逮捕されています。同会の小谷喜美会長に対し、法律に反して5000ドルを渡した容疑でした。もっとも、警視庁に保管されていた事件に関する書類がふたりのアメリカ人に持ち去られ、闇ドルに関する捜査は打ち切りになってしまいますが。

     この事件の2カ月前、リチャード・ニクソン副大統領が来日しています。

     1952年の大統領選挙でドワイト・アイゼンハワーは39歳のニクソンを副大統領候補に選んだのですが、その理由はニクソンが「闇資金」を提供したからだと言われています。一般には企業のヤミ献金だったとされているようですが、月刊誌「真相」の1954年4月号によりますと、その原資は闇ドルの取り引きで蓄積された儲けだったということです。

     1953年に来日したニクソンはバンク・オブ・アメリカ東京支店の副支店長を呼び出して「厳重な帳簿検査と細かい工作指示を与えた」そうですが、その席にビッテルも同席していたと「真相」の記事には書かれています。こうしたこともあり、靖国神社と闇資金を結びつけて考える人も少なくありません。

     2000年にネオコン系のPNACが発表した「Rebuilding America's Defenses」は、ヨーロッパ、中東、東アジアが軍事戦略的に重要な地域だとしたうえで、特に東アジアを重視するとしていました。海兵隊の活動範囲を広げるためにV-22オスプレイを導入すべきだとも主張しています。

    http://www.newamericancentury.org/publicationsreports.htm

     オリバー・ストーン監督は、アメリカが中国を封鎖する態勢を整えようとしていると考えているようですが、私も同感です。「封じ込め」かもしれませんが、「封じ込め」と全面戦争は紙一重です。日本が韓国や中国と対立するように仕向けている勢力がアメリカには存在し、安倍政権はそうした勢力にすり寄っているような気もします。

     そうしたグループがアメリカを東アジアでの戦争に引きずり込む可能性があると警鐘を鳴らす人もいます。オバマ政権は東アジアで戦争に引き込まれることを恐れ、ケリー国務長官とヘーゲル国防長官を千鳥が淵戦没者墓苑に行かせたのかもしれない・・・とも思います。

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  2. 落合栄一郎10:50 pm

    日本の主要メデイアが、現政権批判を避け、政権追従の姿勢を貫いていることは、日本の戦前の情勢に非常に似てきました。アメリカの政府の代表が、日本対中国・韓国のいわゆる歴史認識の違いに基づく緊張緩和を図るべく、靖国参拝を意図的に拒否したということは、アメリカ追従一本やりの日本政権・官僚機構にとっては、打撃でしょうし、それによって彼らが目覚めることがあれば幸いです。しかし,桜井氏のコメントにもあるように、アメリカには、中国との衝突は不可避と考えて、着々と準備を整えている一派があることも事実でしょう。それは、どうもやはりペンタゴンの軍事専門家達(文官でなく)のようです(落合:日刊ベリタ2013.07.31)。

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